ザッパーの光と影
「ザッパー」の名を与えられたZ650は、211kgの車重に64psの馬力を備え、3.30kg/psというパワーウェイトレシオ(馬力当たり重量)からゼロヨン12.4秒を叩きだした。
同時期のZ750Four(A4)は236kg/70psであり、これより25kgも軽い車体に、パワーは6psの減に収めているため、A4のパワーウエイトレシオ3.37kg/psをわずかに凌駕している。
さらに、当時のホンダのライバル、CB750Fourは235
kg/67 ps(3.51kg/ps)、CB550Fourが207 kg/50
ps(4.14kg/ps)であった。
つまりZ650は、500ccクラスの車体に750ccクラスのエンジンを載せているようなものであり、これで走らないわけがない。
実際、取り回しやブレーキングの容易さ、タイトなコーナーが連続する道での切り返しの早さは特筆もので、峠では「またナナハンがZ650にカモられた」といった話がよく聞かれ、ザッパーは「750キラー」「4サイクル・マッハ」といった愛称でも呼ばれた。
しかし、そうした高い評価にも関わらず、国内では比較的不人気車として終わってしまう。
それは、暴走族対策から限定免許制度が施行されたため、大きな苦労を払って限定解除したライダーは、どうしても国内最大排気量のナナハンに乗りたがったし、このバイクの面白さは、重いナナハンから乗り換えてみて初めてその良さがわかる、といった種類のものだったからである。
小柄な車格にもかかわらず、車両価格がCB750Fourと同じという点も不利だった。
要するに、「見栄を張れないバイク」だったのである。
さらに、このエンジンが非常にすぐれたものであったにもかかわらず、Z1/Z2のような伝説の類を築けなかった最大の理由は、大きなレースでの実績のなさである。
そのすぐれた旋回性能によって「ジムカーナ最速」の称号を得てはいても、Z1系エンジンの華やかな戦績がもたらす神話性には、はるかに及ぶべくもなかった。
この性格と状況は、現在のゼファー750およびZR-7にもそのまま受け継がれている。
今でこそ大型二輪免許も手軽に取得できるようになったものの、まだまだ「できるだけ大きなバイクに乗りたい」という欲望は強く、初めて大型免許を手にした者は、どうしてもリッタークラスのモデルに走ってしまう。
だが、いずれリッターバイクの大きさに辟易した多くのライダー達は、永い期間にわたって大型2輪のスタンダードとされてきた「ナナハン・クラス」の優位性に改めて気づき、ゼファー750/ZR-7の持つ面白さが広く知られるようになるのではないかと思われる。
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