クラブマン開発秘話
コンセプト
GB250 ClubmanはCBX250RSのバリエーションモデルであり、主にタンク、シート、サイドカバー、ライト廻りなどを変更して仕上げられている。
1983年の春にRSは発売されたが、その開発段階においてすでにRSをGBのような形で出したいという声があった。その時は時期尚早ということでRSはあのようなデザインになったが、多様化するユーザーの好みに対応して、バイクの趣味性をもっといろいろな形で広げたいということから、GBは企画された。
RSのシングルエンジンが与えられた開発スタッフには、当初はチョッパーなどの案もあったようだが、やはりバイクの熟成期である60年代へのノスタルジーが強くあり、自分たちが乗っても恥ずかしくないシンプルなバイクを造ろうということで、開発がスタートした。
当時はちょうどバイクがファッション化し始めた時期であり、そうした中で、「もっと本物指向のものがあってもいいのでは」という声が若い20代のスタッフの中からもあがっていた。
「それなら、いろいろな所で本物を見てやろう」ということで、スタッフは83年の9月ごろから1ヵ月ちょっとかけて、ヨーロッパの博物館やイギリスのクラシックバイクショーなどの見学にでかけている。
そこで、マチレス、ベロセットなど昔のレーサーの「造りは非常に素朴であるが、価値感がある」ところにいたく感動し、改めてそうしたバイクの良さはシンプルさにあると感じて帰国した。
当時はレーサー風のスタイルが主流になり始めた時期であり、はじめは研究所内でも「今頃、こんな古いバイクを……」といった批判的な声があったが、だんだん煮つめていくうちに、「これはいい、ほしい」という人が出てきた。
開発にあたっては、海外のモデル以外にも自社のCB92を意識しており、社内では「CB92の再来」という声も聞かれた。「バーハンドルがCB72だ」という声もあった。
エンジン
GBの放射状4バルブ方式燃焼室(RFVC)DOHCエンジンは、デュアルパーパスモデルのXLX250Rのエンジンと兄弟のようなものだが、XLXに付いていたバランサーをわざわざ外してあり、しかもエンジンをラバーマウントにしてある。
この結果、アイドリングから4〜5000回転まではシングルらしい振動を発生し、そこから上の回転を使って高速道路をツーリングするときなどは、邪魔な振動が出ないようにしてある。
つまり、低速から高速まで楽しめる欲張った設定である。
スターターについては、一部には「キックスタートのみで」という声もあったが、乗りやすさを最優先させてセルスターターのみとした。 キックも付けたところでそれほど使ってもらえるとは思えないし、両方付けるのはコスト的にも重量的にも無駄である。
セルスターターの歴史を見てもホンダが一番最初に装着しており、ホンダのバイクとしてはセル付きが当然と考えられた。
排気音についても、なんとか60年代の音を出そうと、音のサンプルを集めて検討するなど、かなり神経を使っている。
外装
「オートバイは部品の集合である」という観点から、それぞれの部品に価値感を持たせることを大切にした。
乗るだけでなく、磨いても楽しいバイク、を目指している。
具体的には、アルミリムは、H型ではないものの研ぎの番手を上げているし、各部のメッキのチェックにも気を使っている。
また、エンジンの色をCBX250RSの黒から白に変更し、アルミの素材を生かしている。
ハンドルのグリップエンドも、オーナーが後から磨くことを考えてわざと荒めの仕上げになっている。
GBの大きな特徴となっている一文字ハンドルだが、できるだけ楽な姿勢で一文字ハンドルの良さを知ってもらうために、トップブリッジをわざわざRSより20mm上げてある。
そして、デザイン上で一番気を使ったのは、バイクの顔となるタンクの形状である。
ただ、メーターは当初かなり薄いものを想定されたが、コストを考えて深いものになった。
バックミラーについても、もう少し低くて小さいほうがいいとは考えられたが、実際に乗ってみるとあれくらいの高さと大きさは必要で、あのような形になった。
名称
何か愛称が必要ということで、当初は「夢を持ちたい」という思いから「ドリーム」と名付けられたが、上層部の人が一目見て「クラブマンのイメージがあるな」と言ったことがきっかけになり、「ここまで外装をやったのなら、クラブマンとつけてもいいだろう」ということで決まった。
スタッフは最初「CB」の呼称を付けたかったのだが、「CBは常に最先端をいく、時代とともに進歩していくバイクである」のに対して、「このバイクは逆行している所がある」ということで、結局「GB250
Clubman」となった。
「GB」は「グレートブリテン」などいろいろな意味にとれる、いい名称だと考えられた。
→「CBの名称について」
アクセサリー
趣味性を追求すると、理想像はいろいろと分かれるものである。
ホンダの役員の中には「俺だったらもっと徹底的にやるんだけどなあ」という声もあったが、それほど高いバイクではないGBとしては、これくらいが限界と考えられた。
それでも、改造しなくてもかなりの程度まで満足してもらえるようにまとめてはあるが、購入後自分でいろいろと手を加えたいという人のためにアクセサリーをいろいろと用意し、あまりお金をかけなくても自分でいじれる楽しみを提供した。
フロントとリヤのアルミフェンダー(F:\19,500
R:\14,800)を初め、チェーンケース(\9,800)やヘッドライトステー(\4,800)もアルミ製を用意した。メーターバイザー(\5,800)やタンクパッド(\1,800)もあった。
さらに、クラブマンのロゴ入りのヘルメット(黒:\15,000
銀・赤:\16,000)やタンクバッグ(\5,000)、皮のツーリングスーツ(\128,000 限定300着)まで用意された。
ダブルシートは前後分割式とし、後部座席をオプションのシートカウル(\14,000)に替えれば、簡単にシングルシート仕様にできた。
当初はオプションのリザーバー付リヤショックも企画されたようだが、これは発売に至らなかった。
「クラブマン」という名称からレーシングキットを望む声もあったが、性能的に最新の2サイクルの2気筒や3気筒にはかなわないということで、エンジン関係のパーツは用意されなかった。
まとめ
イメージとしては、ブリティッシュ・トラディショナル・カスタムであり、レーサー志向の多いバイクの中で、最新技術を持ちながらトラディショナルなスタイルをもち、主流に批判的なバイクに仕上げた。
女性に人気が高かったCBX250RSに対して、手作りを楽しむ男のバイクであり、さらには人間との調和を考えたバイクとも言える。
参考: 『HONDA GB250 CLUBMAN』EXCITING BIKE Special Vol.1(バイクコネクション発行 1984年)